◇調査委、取水停止の遅れ批判
集中豪雨による大規模断水や取水停止が6、7月と続いた北見市。北見工大の海老江邦雄・名誉教授を委員長とする「技術調査委員会」が4日まとめた調査報告書は、6月下旬に起きた最初の大規模断水の原因を詳細に検証し、浄水場への濁水流入を防げなかった市の対応を厳しく批判した。7月にも再度の断水に追い込まれた同市は河川のしゅんせつや調整池の設置などの対策を取っているが、そもそも、なぜ今年になって断水につながるほどの集中豪雨が繰り返されたのかはナゾを残したまま。市民の不安が払しょくされたとは言えず、抜本的な対策が望まれる。【高橋正博、三沢邦彦】
■異例の濁水
報告書などによると、1時間に50ミリを超える局地的な集中豪雨が常呂川支流のオシマ川流域を直撃したのは6月22日正午過ぎ。午後3時ごろにも激しい降雨があり、畑や斜面から流れ出した土砂が、常呂川に設置された同市の取水口に流れ込んだ。
通常の土砂は水と分離して沈殿するが、このときは集中豪雨で約600万年前の地層がはぎ取られ、沈殿しにくい微粒子が全国的にも異例の濁度を生んだという。同市の広郷浄水場では84年以降の最大濁度は2000だったが、今回は1万5133を記録。その直前まで少雨で常呂川の水量が極端に少なかったため、支流から流入した濁水を希釈できなかった。
■職員慌て後手
前例のない濁度に市の職員らは慌てた。1万5000を超える濁度の連絡を受けた職員は「ピンとこなかった」「信じられなかった」と証言。すぐに取水停止の措置は取らず、浄水場に流れ込んだ濁水の土砂を沈殿させる作業を続けた。取水口から浄水場につながる導水管の土砂を取り除くため、3時間近く取水を止めたが、再開後にまた濁水が浄水場に流入。23日午前5時過ぎに取水を完全に停止したが時すでに遅く、その後、完全復旧まで4日間もかかる大規模断水に発展した。
こうした経緯から、報告書は早い段階で取水を停止して濁水が下流に流れ去るのを待つべきだったと主張。そうしていれば、取水停止中の断水はあっても長期間の大規模断水は避けられたはずで、結果的に大量の濁水を浄水場に引き込んでしまったことを人為的ミスとみなし「自然災害と言われている節があるが、間違いだ」と批判した。
報告書は特に(1)市が今年5月に策定した水質汚染事故対応マニュアルは沈砂池で毒物やアンモニア性窒素、油分の異常を確認した場合の取水停止措置を定めているが、濁水の対応が明記されていない(2)沈砂池に設置された濁度計が実際の3分の1程度の数値を表示する不正常な状態のまま使われていた--ことを重視。こういった態勢の不備が緊急時の冷静な判断を妨げたとしている。
■市民の不安消えず
7月23日の集中豪雨でも導水管に濁水が流れ込み、再び断水。その後も2回にわたる降雨のたびに取水を停止する事態が発生した。市が取水停止の判断を早めたため、6月ほどの混乱は見られなかったが、市民からは「雨が降るたびに断水ではたまらない」と怒りの声が上がっている。
それにしても、なぜ急に濁水被害が出るようになったのか。広郷浄水場が運転を開始した75年から30年余り、濁水による取水停止や断水に見舞われたことはなく、今年が初めてだという。畑や森林、川底、斜面が集中豪雨に削られたとみられるが、今年になって激しい濁水が発生するようになった理由は不明のままだ。
しかし、今後も同様の集中豪雨が降ることを前提に対策を練らなければならない。報告書は緊急対策として、短時間なら取水を止めても断水せずにすむよう調整池の設置を提言。市側はすでに浄水場に、容量5500トンの貯水池を確保した。また、網走土木現業所は常呂川の5本の支流に堆積(たいせき)した土砂の除去作業を実施。網走開発建設部は大型の土のうと濁水防止フェンスを常呂川の本流に設置し、オシマ川など支流から濁水が流れ込んでも取水口に流入しにくくした。
報告書はさらに、緊急時に適切な判断ができるようマニュアルの整備や優秀な技術者の育成を提言。このほか、常呂川流域の水質改善や取水口下流への支流出口の付け替えなどを抜本対策として挙げており、浄水場の移転も含む長期的な対策が今後、議論されそうだ。
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◇北見市の大規模断水経過表◇
<6月22日>
正午ごろ~ 広郷浄水場の日の出取水口付近で1時間に50ミリの局地的豪雨
午後 1時20分 河川水位の急激な上昇を確認
3時35分 浄水場職員が沈砂池濁度計の数値上昇を確認
6時 7分 浄水場流入前の原水濁度が上昇
7時40分 濁度1万3263度に上昇。その後も下がらず、原水濁度の最高値は1万5133度を記録
10時半 原水取水を停止。浄水場内の沈殿池で排泥などの洗浄作業実施
11時 沈砂池から浄水場へつながる2本の導水管内の排泥作業開始
<23日>
午前 1時17分 導水管の排泥作業が終了し原水取水を再開。原水濁度は3290度
4時10分 原水濁度が390度に改善
5時 5分 高度処理水、ろ過水の濁度が改善されず再び原水取水を停止
7時半 復旧に向け洗浄作業まる
8時半 広報車13台、39人体制で市民への広報活動始まる
40分 浄水場からの供給停止。北見・端野両自治区約5万8700戸で断水
9時35分 給水所10カ所を設置。消防車11台も出動し12病院施設に給水。給水所はその後、最大25カ所まで増設
<24日>
午前10時 ろ過水の濁度が0.1を下回り給水を再開
<27日>
正午ごろ 全市で給水再開
<7月1日>
午後10時 すべての給水所が閉鎖
(毎日新聞 北海道版 引用)
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